秋田旅行で入手したリーフレットを全部読む 1〜9冊目
昨年10月頃、秋田を旅行した。
男鹿半島、寒風山、能代、横手、秋田市周辺…と墓参りの合間を縫ってタイトなスケジュールで秋田を見て回った。斜めに生えた松が無限に続くような防風林をレンタル自転車で走り、添乗員のお姉様に引き連れられた無表情高校生の集団に翻弄され、100体近く並ぶなまはげをぼーっと眺め、疲れ果てながらも名物のしょっつる焼きそばと醤油ソフトをしっかり貪り喰らい、暴風雨の中を巨大スーパーまで歩き、お土産をわんさか購入し、とても楽しかったわけだが、そんな道中で大量に手に入れてしまったものがある。
リーフレットである。
行く先々に設置されているリーフレットを、貰わないわけにはいかなかった。何故ならリーフレットを読むのが好きだから。ざっくりと「リーフレット」と呼称しているが要するにチラシや印刷物、つまりはパンフレットのことである。
好きが高じて自分でも作ってみたくなり、存在しない架空の町・胡孫町の観光リーフレット(上記写真参照)を製作したこともある。
リーフレットの面白さを言語化するのは難しい。社会に向けて地域や会社が自己紹介する「顔」的な刊行物であるという側面に対して、意外とテキトーな文章が載っていたり、首をかしげるキャッチコピーやユーモア、なんとも言えない写真、見たことないご当地キャラの連発、といったような、形容し難いゆるさが魅力なのではないかと思っている。
そして、私はその魅力を「混乱」として楽しむのが好きである。知らないものを知らないままに想像し、意味不明さに混乱し、不思議や不条理を感じる。もちろん、最終的に調べることにはなるのだが、それ以前の段階、知る前だからこそ感じられる面白さも存在するのでないかと考える。
秋田旅行中、手当たり次第に収集したリーフレットやパンフレットは70冊弱。おもしろいと感じた箇所を紹介すると同時に、言語化できるようになったりならなかったりしたい。よろしければお付き合いください。
[2023/1/13現在 1〜9冊]
【一冊目】
『IRODORI TABI DAISEN』大仙市
かなりちゃんとした観光パンフレットだが、開いてすぐ驚いたのはキャッチコピー下の文章だ。
「食べ物・温泉・なつかしい風景・あったかい人柄、そして夜空には花火。」
食べ物、温泉は理解できる。なつかしい風景も、誰の心にも残る日本の原風景的な意味合いだろう。問題は「あったかい人柄」だ。自分たちで「あったかい人柄」を自称している上に、観光資源と並んで挙げられていることがミスマッチでおもしろい。
「こめこめプラザ」という名前のまぬけさが良い。
でかすぎる。
全国ジャンボうさぎフェスティバルという文字列を確認したあとでも、再度でかすぎることに驚ける楽しさがある。抱えられた巨大うさぎの顔が見えないのも不気味でおもしろい。
インターネットで「ジャンボうさぎフェスティバル」と検索すると様々な巨大うさぎの画像を見ることができて楽しいのでオススメです。"DEKA"と書かれた服を着たうさぎの着ぐるみが公式で出てきたのには笑ってしまった。安直すぎる!
【文化庁】100年フード認定「ジャンボうさぎ料理」をぜひご賞味ください | 秋田県大仙市
100年フードに認定されていた。食用だったのか、という驚きと100年フードってネーミングなんなんだ?という疑問が脳内を駆け巡る。
Wikipediaに記載されているフェスティバルのイベント内容を一部抜粋する。
・デカラビともちつき
・ジャンボうさぎパズル競争
・杜仲めん早食い競争
・日の丸(うさぎ)なべ試食会
もはやうさぎとは関係なさそうな麺類の早食いも含まれていておもしろい。「デカラビともちつき」も、デカラビが誰なのか分からず混乱する上に餅をつかされるという不条理だ。ジャンボうさぎパズルも想像できない。うさぎなべ試食会は…デカいうさぎ抱いたあとに「おいし〜い」って言えるか?!という不安が湧き起こる。
あと、ドンパン広場も不思議な名前である。
「夢残月」と書かれた落下傘を掴み取ろうと駆け寄る図が美しい。曇り空も合間って、それこそ白昼夢のようだ。
「夢残月」という聞き慣れない単語が「降ってくる」のって最高だ。単語が降ってくることなんて滅多にない。
単語の意味を検索してみたけれど詳しくは分からなかった。大会ホームページにはルールなども載っていてほっこりしますので、気になる方は是非参照ください。
【二冊目】
町内マップがメインの冊子である。
開いてまず目を奪われたのはこれだ。
ドラゴンフレッシュセンター!
中華風の龍が片手に握りしめているのはドラゴンボールではなくメロンである。こんな組み合わせ、いまだかつて見たことがあるだろうか?特産品八竜メロンから考え出されたモニュメントであることはすぐ理解できるが、龍とメロンのコラボレーションがストレートに立体化されていてすごい。衒いのないカッコ良さがある。
マップにも丁寧にイラスト再現されている。
「こはぢゃ」の語感が可愛い。
「ジャンボエビフライ」という文字列には心躍る魅力がある。料理の写真が無いなら尚更、である。"サンバリオ内"レストラン「たかいし野」で提供される名物のジャンボエビフライ、おいしいんだろうなあ…
80年代シティポップを想起させるようなロゴが美しい。「砂丘温泉 ゆめろん」という名前も素晴らしい!ファンタジックでファンシーな世界観を想像する。
「夢コース」と銘打たれたイタリアンカラーの懐石も、不思議なキッチュさがある。
【三冊目】
「美郷町観光ガイドBOOK」美郷町
表紙には「み」の文字が腹部に刻まれたキャラクターが載っている観光ガイド冊子。しずくちゃんやぴちょんくんを思い起こさせる、なつかしいキャラデザだ。キャラクター紹介が見当たらなかったので名前は不明。
見どころページに突如出現する穴埋め問題。
男性器の俗称が入るだろうとは予測できるのだが…男性○○○という呼び名がしっくりこないのだ。どうもモヤモヤさせられる。難問である。
時折、美郷町のキャラクターが挿し込まれている。ちっちゃいちゃぶ台で食事をするゆるキャラは、なんだか健気だ。立ち絵のバリエーションがそこそこあり、段々と可愛く思えてくる。
どストライク!と思わず叫びたくなるような素晴らしいイラスト。中華麺から生えているたぬきなんて最高に決まっている。おててが前方に飛び出しているのもキュートでおまぬけ。たぬき中華そばという珍しい料理なのも興味をそそられる。このままぬいぐるみにしてほしい。Tシャツを着たい。
一瞬「ゲバヘルでもかぶっているのか?!」と錯覚してしまう立ち絵イラストに心を掴まれた。見開きで燃え盛る炎、なんかやたら長い棒、そりゃヘルメットも必要だろう。可愛い立ち絵だけじゃなく、こんな渋いバージョンもあるとは…
キャラクターの名前が「竹うち」だったら面白いなと思ったが、行事名だった。8メートルの青竹で打ち合う行事というのも不可思議で興味深いものである。
マップの鉛筆イラストにもキャラクターが描かれていた。タッチが変わるとまた別の魅力が生まれる。実在感があっていいイラストである。一体誰なんだろう、こいつは…
その答えは裏表紙にあった。「ミズモ」と言うらしい。「竹うち」のほうがしっくりくる気がする。
検索すると、グッズ展開も豊富で、LINEスタンプやTwitterアカウント、絵本もあるようだ。竹うちヘルメットバージョンのミズモグッズ、欲しいものである。
【四冊目】
山を紹介したシンプルなリーフレット。
簡潔で分かりやすいので取り上げたい点は少ない。
個人的に気になったのは6合目「賽の河原」だ。賽の河原と言えば三途の川沿いにあるやつだが、こちらは山の真っ只中である。
調べてみると、賽の河原という地名は全国に何箇所もあるらしい。霊場やパワースポット、石が積み上がった場所などを指して名付けられているようだ。そんな恐ろしい地名をいくつも存在させないでほしい。
デッカい影ってあんまり見たことないから、山サイズの影見たらテンション上がるかもしれないな。
【五冊目】
『ぷちたびあきた』秋田・男鹿・潟上・南秋
4エリアにまたがったガイド冊子。各地域の見どころが大まかにまとまっている。
「まんまタイム」!
雑に「餌やり」と称していた己を恥じたくなるような、愛らしい言い方だ。「サンバタイム」みたいな語感なのもじわじわくる。写真のトラが抱え込んだ物が一体なんなのか、分からないのも良い。食べ物ではないのだろうか?「あきぎんオモリン」「アニパ」といった呪文のような名前も面白い。
へそが丸すぎて怖い。「へそ公園から見える景色」も「銀色の球体である"へそ"が悠久に見ている景色」に感じられて怖嬉しい。
カニが喋っている。
カニ曰く「手ぶらでBBQできる♪」である。
カニの目は明らかに生気を失っており、手足はだらりと組まれ、背中には同じく虚な同胞を背負い込んでいる。
しかし「手ぶらでBBQできる♪」である。
なんという生き様だろうか。
NAMAHAGE BBQ GARDENにその高潔な魂は眠る。
【六冊目】
『アオーネ白神十二湖/十二湖リフレッシュ村』
秋田で手に入れた青森県の観光リーフレットである。「アオーネ」という名前はやっぱり「会おうね」からきているのか。「リフレッシュ村」の方も「自らリフレッシュ村を名乗るとは…大きく出たもんだ」という感慨にふけってしまう名前だ。右端に「A Wo Ne」のロゴがあるが、リーフレットを読んでも意味は分からない。
雄大な自然のど真ん中にアクセス情報を載せるという荒技が光る。
「アオーネ」「リフレッシュ村」のほかに「森の物産館キョロロ」もあるらしい。ネーミングの法則性がよくわからなくて面白い。
【七冊目】
『あきた県産品プラザ』
これまでと打って変わり、県の名産品やお土産を特集したリーフレットだ。
このリーフレットに掲載されているあきたこまちのお粥のデザインを見てほしい。淡いピンク色のグラデーションによって表現される小町感、実写の女性が大きく配置されているのも、もはや時代とは合っておらず、キッチュで美しい。
薄すぎる。謎の薄い板である。
さなづらの正体は、山葡萄ゼリーのお菓子だ。やたらに薄いゼリーは、ディストピアSFの食品のような魅力も放っている。
裏表紙では商品が購入できる店舗が紹介されている。アトリオンは昭和の面影が残ったゴージャスなビルなので、秋田に行く機会があれば覗いてみてほしい。
【八冊目】
『四季色彩』仙北市
目次まで製作されている丁寧なパンフレット。表紙下部ロゴ、犬みたいなマークで角と読ませるのがトガっている。
懐かしさのある統一フォーマットで四季が紹介され、レトロで美しい冊子である。春のページ、河原を歩く学生たちのうららかな写真を眺めていたら存在しない青春の記憶まで思い出しそうになったが、よく目を凝らすと
空気椅子の老人も写っており、正気に戻った。
漬け物の彩度がバキバキだと嬉しいなぁ。
【九冊目】
『たんせ』横手・湯沢・雄勝
A4サイズ四つ折りの巨大マップが内包されたパンフレット。各エリアを代表する二頭身のキャラクターが描かれていてかわいい。特に良いなと思うのは
羽後エリア、西馬音内盆踊りの踊り手のデフォルメだ。盆踊りの怪しげな美しさをギュッとポップにしている。
滝に打たれて絶叫している人はいつ見てもおもしろい。
ぽよよんの森に迷い込んだ探検隊一行の消息が不明となっています。
どうしてもあの炭酸ジュースが頭をよぎってしまう名所である。すでに知っているジャンクなジュース「力水」と、石に刻まれた伝統ある名水「力水」のギャップに混乱する。
置いてあるスコップで掘って出てきた温泉を「オリジナルの足湯」と言い切る度量がすごい。
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今回の紹介はここまでとなります。
読んでくださった方の脳味噌の片隅にこびりつくような情報があれば幸いです。そして秋田県は魅力的な場所なのでぜひ足を運んでみてほしいです。
続きは近々更新予定です。
数冊ずつの更新となりますが、70冊取り上げるまで地道に頑張ります。よろしくお願いします!