岡山で見たものを見せる【1日目・2日目】

【1日目】

 

岡山で最初に見たものは、荷物受け取りレーンを流れていく桃太郎だった。

 

「わ〜桃太郎だ。岡山県といえば桃太郎だよなあ。」と徹夜明けの頭でぼーっと写真を撮り、インスタへ投稿しようとして「ははあ、どんぶらこ、ってことね」と気づいた。

しかし、ベルトコンベアを流れていく仁王立ちの桃太郎は、桃の中にいるにも関わらず服を着用している。おばあさんが桃を切って桃太郎が生まれた、あの瞬間って、桃太郎は全裸の赤ん坊のはずである。これはなんのシーンなんだ。無いシーンの像だろ。

 

いわゆる「桃太郎」たらしめるために「桃から生まれた(物語冒頭・赤子)」「お供にきびだんごをあげた(物語中盤・青年)」「日の丸の鉢巻に陣羽織、幟を立てた姿をしていた(物語中盤・青年)」という、本来であれば同時に成立することのない要素を集約させているのだろう。

このあと岡山県内で確認したももたろう像のほとんどは、犬猿雉を連れた姿だった。この像に限っては「ベルトコンベアでどんぶらこさせたい」「しかし赤子ではなく、わかりやすい青年期の桃太郎がよい」という要望の元に生まれた姿であろう。

 

記号的アイデンティティ同時に成立させようとしたがゆえに生まれた、存在しない時間軸の像を見ることができて嬉しかった。

ただ、足元のキラキラについては未だに何もわからない。モヤモヤする。

 

岡山駅へ向かうため、同行者のにせ犬とバスに乗る。

岡山県マスコットの「うらっち」と「ももっち」のデコ自販機。

結構かわいいぞ、と我々の間で話題に。

 

到着した岡山駅前では、桃太郎像が約100mという結構な距離を移動していた。

「移動しました」ではなく「移動しています」なので、今この瞬間も移動し続けている可能性があるな、と思った。像を観測していないので審議は不明。

 

路面電車乗り換えのために地下道へ。

出ようとした階段にかっこよすぎる看板が掲げられており、思わず「うわー!」と声が出た。

「階段名称」という呼称は、無骨で飾り気のないクールさがある。工業的と言い換えてもいい。さらに名称は「噴水3」!我々のいる地下からは確認できないが、陽の当たる地上の楽園にはきっと噴水があるのである。しかも、3つくらいはある(3だから)。ディストピアSFのようなディティールを想起させてくれる素敵な看板である。

 

個展会場であるgallery ofさんへ搬入に向かう。

5階まで登る階段の窓、そのほぼ全てに張り紙が貼られている。

階を上がるごとに文言の語気が強くなったり、冷静になったりしているのも気になるが、なによりも、どの階でも張り紙を無視して窓が開け放たれまくっていることがこちらを愉快な気持ちにさせてくれる。

ハトはいなかった。

 

of運営のおふたりにすばらしく素敵に設営をしていただき、夜9時ごろに夜ごはんへと向かう。

 

美しく光る木花園のファサード

ローカルコンビニチェーン「ら・む〜マート」(調べたところによると正確には「コンビニスタイルのディスカウントミニスーパー」)。

日本一安いコンビニとも言われているようだ。

大黒天物産という会社が運営しており、看板キャラクターは打ち出の小槌。「ら・む〜」はどういう意味だろう?と不思議に思い調べたが、太陽神と関係があるらしいという程度の言及に留めておかせてください。

 

みんなで夕飯を食べた居酒屋の箸袋がすごかった。

ファンシーな折り紙を使って富士山箸袋を折り、店名のスタンプを押している。手間がかかっている。しかも店名は「ともぞう」だ。狙って出せるミスマッチさではない。自分が漫画内で居酒屋を描写するとして、こんな箸袋を思いつくことができるだろうか?

 

お腹もいっぱいになり、ホテルへ帰る。

道中で地下広場「しろちか」を経由した。

鬼の首に腰掛けて微笑む不気味な桃太郎。

真夜中の「しろちか」は人気がなかった。

昼間であれば憩う人々が囲むであろうテーブルとイスも、休むことなく吹き上げる虹色の噴水も、しろちか多肉植物園も、誰もいないのに蛍光灯で煌々と照らされている。

リミナルスペースのような少しの不穏さと、美しさを感じさせるよい広場である。

 

 

【2日目】

歯も磨かず、服も脱がず、気づいたら眠りについていた。

ホテルのロビーで販売されているコッペパンを買ってもさもさと食べる。

 

ofさんがあるビル一階カフェの植え込み。

土かと思ったら栗だった。いったい誰がこんなに栗を?

 

在廊は楽しく、来てくれた方々とお話しをしているうちにあっという間に時間が過ぎていく。夕方になったので、休憩も兼ねて近くの古本屋「ながいひる」さんへ向かった。

大喜利看板がふたつもある。

 

立ち寄ったスーパーにて発見したかわいい餃子の皮。パオ!

 

立方体

 

整列するエビフライ、パッケージと中身も含めておもちゃのような魅力がある。

 

心なしかシダ植物が多いような気がした。

 

「ながいひる」さんは大変に居心地がよく、本棚をじっくりと眺めていたら40分くらい経っていた。買ったものを紹介する。

岡山に来たら絶対入手したいと思っていた岡山文庫。

県内の朝市、ふるさと市が写真と共に網羅されている。

もちもち村、行きてえ〜

『岡山の石造美術』と、みんな大好きカラーブックスもついでにゲット。

ずっと欲しかった内海慶一さんの『棕櫚村の事件』!

ありがたい。

of運営のおひとりである松川さんのzine。

運良く最後の一冊を入手することができて一安心。

2023年に世田谷文学館で『萩原朔太郎展』を見てから、萩原朔太郎(と、室生犀星)のことが気になり続けている。

これは朔太郎ファンブックといったかんじで、ありとあらゆる朔太郎の顔写真、キメ写真が載っていてウケたので購入した。

この、たまらん構図にやられて……

あとはイボイボのとうもろこし、リストウォッチ型電卓時計。

 

他にも気になる本がたくさんあったのだが、キャリーケースにも限度があるため泣く泣く断念。次に岡山へ来るときも必ず再訪したい。

 

夜はみんなで下津井港へ。

サモサと刺身とパパドと魚の唐揚げとラーメンを食べた。

ホテルへ帰り、差し入れでいただいたお菓子や雑貨にワイワイしていたら、いつのまにか寝ていた。

 

【3日目・4日目へ続く】